山口県萩市。明治維新の志士たちを輩出した歴史の街として有名ですが、この街の北端、島根県との県境に近い須佐湾に、地球の歴史を物語る凄まじい絶景があるのをご存じでしょうか?
その名も「須佐ホルンフェルス」。
「ホルンフェルス」。
名前の響きからして、ただものではない感じがプンプンしますよね。
ドイツ語で「角(ホルン)のように硬い岩(フェルス)」という意味だそうです。
実際に行ってみると、そこには日本海の荒波に削り取られた、高さ約15メートルの巨大な「縞模様(ストライプ)」の断崖絶壁がそびえ立っていました。
まるで巨大なバームクーヘンか、ミルフィーユか。
人工物のように整然とした白と黒のラインが海から突き出ている姿は、まさに自然が作り出したアート作品。
今回は、この「地質界のスーパーモデル」とも呼べる須佐ホルンフェルスの魅力と、現地での体験レポートをお届けします。
現地レポート! 須佐ホルンフェルスに行ってみた
駐車場から徒歩10分のプチトレッキング
アクセスは、JR山陰本線の須佐駅から車で約10分。
「つわぶきの館」という休憩所の横に無料駐車場があります。
車を降りて、案内板に従って遊歩道を歩いていきます。
最初は舗装された歩きやすい道ですが、徐々に視界が開け、海が見えてきます。
潮風が気持ちいい!……と言いたいところですが、日本海特有の強風が吹き荒れていることもしばしば。
10分ほど歩くと、いよいよホルンフェルスが見えてきます。
遠くから見てもその異様さは際立っていますが、近づくにつれてその大きさに圧倒されます。
柵がない!断崖絶壁のスリル
ここの最大の特徴(そして最大の恐怖ポイント)は、「柵がない」ことです。
断崖の先端まで、自分の足で行けるんです。
もちろん、「ここから先は危険」みたいな看板はありますが、物理的な壁はありません。
一歩踏み外せば、そこは荒れ狂う日本海。
恐る恐る先端まで行ってみました。
足元を見ると、断ち切られたような岩の断面が、垂直に海へ落ち込んでいます。
波が岩にぶつかり、「ドォォォン!」と地響きのような音が足の裏から伝わってきます。
「ひえぇぇぇ……」
足がすくむとはこのこと。
でも、その恐怖と背中合わせにある絶景は、言葉を失うほどの迫力です。
西サスペンス(火曜サスペンス劇場)の犯人が追い詰められる場所として、これ以上のロケーションはないでしょう(笑)。
「断層」ではなく「海食崖」でした
このホルンフェルス、よく「須佐ホルンフェルス大断層」なんて呼ばれることがありますが、実は地質学的には断層ではないそうです。
正解は「海食崖(かいしょくがい)」。
マグマの熱で変成した岩(砂岩と泥岩の互層)が、長い年月をかけて日本海の荒波や風によって削られ、今の美しい断面が露わになったもの。
つまり、地球の内部で作られた地層が、自然の彫刻刀によって削り出された姿なんですね。
「21世紀に残す日本の風景遺産100選」や「日本の地質百選」にも選ばれているのも納得です。
ただ眺めるだけでなく、地球の鼓動のようなパワーを感じられる場所です。
撮影のポイント:狙い目は「夕方」
ホルンフェルスは北西向きにあるため、日中は逆光気味になることが多いです。
おすすめの時間帯は、太陽が西に傾く「午後、特に夕方」。
西日に照らされた岩肌は、縞模様のコントラストがより一層くっきりと浮かび上がります。
さらに、夕日が日本海に沈むサンセットタイムは格別。
赤く染まる空と海、そしてシルエットになったホルンフェルス。
神々しいまでの美しさです。
ただし、夕方は足元が暗くなるので、懐中電灯を持参するか、日が沈み切る前に撤収するようにしましょう。
近くの不思議スポット「畳ヶ淵(たたみえん)」
須佐ホルンフェルスに行ったら、ぜひ立ち寄ってほしいのが、車で15分ほどの場所にある「畳ヶ淵(たたみえん)」です。
ここには、「亀甲状(六角形)」の岩がびっしりと敷き詰められた不思議な川原があります。
これは「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」と呼ばれる地質現象で、溶岩が冷えて固まる時にできた割れ目です。
まるで人工的に六角形のタイルを敷き詰めたような、幾何学的な風景。
自然が作ったとは思えない精巧さに驚かされます。
水も驚くほど綺麗で、夏場なら足を浸して涼むのも最高ですよ。
お土産は「須佐男命いか」
須佐地域のブランドグルメと言えば、「須佐男命いか(すさみこといか)」。
この地域で獲れる「ケンサキイカ」のことで、地元の伝説に残る須佐之男命(スサノオノミコト)にちなんで名付けられました。
活け造りでいただくと、透き通った身の美しさと、コリコリとした食感、そして噛むほど広がる濃厚な甘みに悶絶します。
ホルンフェルスを見た後のランチは、ぜひイカ料理で決まりです!
まとめ:地球のスケールを感じる旅へ
須佐ホルンフェルス。
そこは、人間のちっぽけさを痛感させてくれる場所でした。
何万年、何億年という時間をかけて作られた地層。
それを容赦なく削り続ける波の力。
柵のない断崖に立ち、風を受けながら海を見つめていると、日々の悩みなんて波しぶきと一緒に消し飛んでしまうような気がします。
アクセスは決して良くありませんが、わざわざ行く価値のある、本物の絶景です。
次の休日は、山口県の端っこで地球の神秘に触れてみませんか?
(くれぐれも足元にはご用心を!)

